2017年現在でも、日本では著作権の消失は著者の死後50年後です。
TPPの影響で70年や100年に改正されるのでは、という雰囲気がありつつ全然無さそうです。
この50年という数字が保たれると仮定します。
すると、2017年時点で著作権の消失している著作物(例えば書籍、本)は1966年以前に亡くなった方による著作物です。
1966年といえば戦後11年ですし、戦前にも著名な著作物は出版されています。
この1966年という年が進むにつれ、著作権の消失する著作物は増えていきます。
何が問題かというと、出版社の対応が頻繁になっていくというものです。
というのも、著作権の消失と出版社への問い合わせが増えることの関係性を述べる必要があります。
著作権が消失した著作物は、誰でも利用することができます。
著者の死後50年経過したことを確認すれば、利用して良いように思われるかも知れませんが、色々あります。
例えば、著作権の消失した書籍を国会図書館がデジタルコレクションというサイトで書籍の全てのページの写真を撮って公開しています。
上記のサイトのドメインが「.go.jp」であることからも分かりますが、政府の活動として捉えられます。
(民間人に対する国の活動として、きっちりする必要があるという意味です)
そんな国会図書館ですが、著作権の消失した書籍を一般公開していたところ、現存の出版社から、「今でもその書籍で稼いでいるんだ」という申し立てがあり、インターネットでの公開を中止した、という出来事がありました。
まとめると、
・法律的にはOK
・出版社は現存
・その書籍の売上は今もある
法律というより、道徳的・倫理的な話ですが、
国の活動として、民間人の自由競争に影響を及ぼしてまで、法律をクリアしたことを利用して活動すべきか、という事だと思います。
この事例のように、法律的にはOKでも、出版社の利益に影響することがあります。
また、国会図書館は公開中止という判断をしています。
これだけ見れば、「道徳・倫理上等!」という人や「法律クリアで十分」という人にとっては、著作権の消失した書籍を利用する際に、現存の出版社は関係ないように思われるでしょう。
ですが、出版社が現存する場合には出版社に問い合わせる必要があります。
著作権の法律には、著作権継承者という人が登場し、著者のご子息などが著作権を継承している可能性があります。
彼らは著者と同様に出版する権利を持ち、著作権継承者が亡くなるまでは著作権は有効となります。
そのため、著作権が消失したかどうかの判定は、
・著者の死後50年
・著作権継承者の有無
-著作権継承者の生存確認
の2(3)項目を確認する必要があります。
著者の関係者であれば著作権継承者の情報は得られるかも知れませんが、その他99%以上の日本人には、その情報にたどり着くのは途方も無い人探しに見えます。
そこで、著作権継承者に関する情報を有している可能性のある出版社に問い合わせると、出版社が情報を持っている可能性があり、回答を得られることがあります。
それによって判明する場合はOK、出版社も情報が無かった場合や出版社が無くなってしまっている場合には、インターネットで少し頑張る位で十分でしょう。
とにもかくにも、調査する術があるので、現存の出版社に問い合わせるという手段は通ることになります。
ここまできて、題名の「出版社の対応」に進みます。
今後時代が進むにつれて、著作権の消失した著書の利用が進むとすれば、出版社への問い合わせも増えていくでしょう。
その度に社内のある人がデータを調べて、丁寧にメールで回答してもらっていくと、その対応量が無視できない程になっていきます。
その対応策として、出版社のホームページなどで著作権継承者の情報や現在も販売しているか等の著作権に関連する情報を調べられるような検索サイトを設置して、自動で回答できるようにしておくと問い合わせへの対応を減らせるのでは、と思います。
これのデメリットとして、そういったシステムを開発する必要があるということ、「どうぞご利用ください」という競合他社を増やすかのようなメッセージになる可能性、亡くなった方々の情報を次々に更新していくという活動、検索するだけでよいというハードルの低さ、が挙げられます。
その他いろいろあるかも知れませんが、著作権の問い合わせ対応が大変になる前に考慮されては、と思います。
最後に、著作権に関する問い合わせが増加する根拠として、著作権の消失した書籍の現代語訳の本が出版されていることを挙げておきます。
清少納言は論外ですが、福沢諭吉も森鴎外も20世紀前半に亡くなっているため、法律はクリアされています。